※専門家でも何でもない、一介の大学生が授業で作成した論文です。

この論文を「参考文献」にしたり「引用元」にしたりしても、あなたの論文の信頼性を高めることはできません。ご注意ください。

ただ、一番最後にある参考文献一覧を見れば、参考になる文献が見つかるかも知れません。

 

※注釈(「注1」など)については一番下にまとめてあります。

 

2010年

小説における女性語が持つ、女性らしさ以外のイメージ

執筆者:夢前黎

1. 【研究テーマ】

小説における女性語が持つ、女性らしさ以外のイメージ

 

2. 【主題文】

 このレポートでは、現実での女性語の使用が衰退した現代の小説において、女性語がどのような意図で使われるのかを明らかにし、使用することによって台詞に付加できる女性らしさ以外の要素を提示する。

 

3. 【研究の動機と目的】

 現代社会における女性語の使用は衰退しているが、フィクション小説では現代日本を舞台としていても女性語が採用され続けている。また、女性語で話す登場人物は必ずしも女性らしいわけではない。

 では、女性らしさを強調したいわけではない場合、作者があえて女性語を採用する目的は、その登場人物の性別が女性であることを示すことだけなのだろうか。私は、女性語が表現している登場人物の性質は女性らしさや性別の他にもあり得ると考え、それを証明するためにこの研究を開始した。

 先行研究としてはドラマ脚本についての女性語研究が盛んであるが、フィクションであるからこその女性語使用の効果について研究したいため、生身の人間が演じるドラマ脚本より、読者が文章のみから登場人物のイメージを読み取る小説の方が研究に適していると判断した。

 

4. 【用語の定義】

◆女性らしさとは

 何をもって女性らしいとするかは時代や地域によって異なるが、現代日本では「やわらかな美しさ・優しさ」(注1)を女性らしさとしている。

 

◆女性語とは

 『日本大百科全書』(小学館)によると、女性語とは「学術的には女性の使用することば全体をさすが、狭義には男性語と差異の著しい女性特有の語をいう」ものである。また、「室町時代に宮中女性によってつくられたことばは「女房詞」、江戸時代に京都・大坂・江戸の遊女の使ったことばは「廓ことば」といって、学問上女性語には含めない」。(注2)

 このレポートでは狭義の女性語を取り扱う。以降本文中で女性語と書いた時には、女性の使用する言葉全体ではなく、男性語と差異の著しい女性特有の語のみを指す。

 主な女性特有の語は、「あら」「まあ」などの感動詞や、「わ」「だわ」「のよ」などの終助詞であるため(注3)、女性がそれらの感動詞や終助詞を用いた時、女性語を使用したと判断する。

 なお、本レポートでは「わ、よ、わよ、の、のよ、かしら、て、てよ、こと、たら」が発話を女性語たらしめる終助詞であると定義する。これは、これらの終助詞が複数の辞書に女性語であると記述されていることに基づいた判断である。(注4)

 終助詞は接続の仕方、イントネーション、用法等によって、男性語となったり女性語となったりするが(注5)、文頭の『日本大百科全書』の記述に準じると、ある言葉が女性語であるためには女性に使用されていることが第一の条件である。よって、男性が発した言葉は、本人が女性語の使用を意図したのでない限り女性語とは見なされない。

 

5. 【女性語としての助動詞の用法】

 『現代語の助詞・助動詞 -用法と実例-』(国立国語研究所)で意義・用法・実例を確認した。この資料は1951年に出版されたものであるため、現在の小説で使われている女性語とは異なる用法を持つ可能性があるが、ここでは各助動詞の元々の性質を明らかにすることを目的とする。

 実例に関しては、必要な部分だけ抜き出す、平仮名を漢字に変換する、主語を他の言葉に置き換えるなどの若干の変更を行った。

 

◆女性語としての終助詞「わ」

 話の内容について軽く主張する助詞である。驚嘆の意はかなり薄れ、むしろ表現を和らげ、丸みをつける響きをもつ場合が多い。

 例「はっきりお断りするわ」

   「いやだわ」

 なお、男性語としても「わ」は使われるが、その場合は下降調となり、上昇調のイントネーションを持つこの「わ」とは区別される。(注3)したがって、女性が下降調のイントネーションで「わ」を使ったとしても、それは女性語ではない。

 

◆女性語としての終助詞「よ」

 実例を見る限り、「動詞+よ」という形で使われる時は女性語ではないようだ。

 ①断定する、言い張る、言い聞かせる気持ちで念を押す。

   例「まだ八時よ」

     「ロシア語を知っているからよ」

 ②疑問の意を表す語と共に使い、疑問の意に相手をなじる気持ちを添加する。

   例「なに言ってんのよ!」

 ③命令を表す語と共に使い、命令や依頼の気持ちを少し強める。

   例「およしなさいよ」

 

◆女性語としての終助詞「の」

 連体形につく。女性的用語であるが、「の」単体では女性専用というわけではない。「よ」と組み合わさった時に特に女性語として用いられる。

 ①断定の気持ちを軽く表現する。

   例「さよならしてくるの」

     「何も食べたくないの」

 ②質問をする。

   例「どこへ行くの?」

     「どうしたの」

 

◆女性語としての終助詞「わよ」

 「わ」と「よ」が組み合わさったもの。

 これら二つの用法を総合すると、軽い主張と共に断定するということになる。

 例「私も引っ張るわよ!」

 

◆女性語としての終助詞「のよ」

 「の」と「よ」が組み合わさったもの。

 これら二つの用法を総合すると、「の」と「よ」の中間程度の主張度で断定するということになる。

 例「分からないのよ」

   「赤ん坊が生まれたらしいのよ」

 

◆女性語としての終助詞「かしら」

 不審・疑問の気持ちを表す。

 ①自分自身に対して問いかけるニュアンスを持つ。

   例「何を買おうかしら」

 ②「~ないかしら」の形で、願望を表す。

   例「一人ぼっちでさみしい、誰か来てくれないかしら」

 ③相手に対する問いかけ。

   例「ねえ、これならどうかしら」

 

◆女性語としての終助詞「て」

 「って」の形をも取る。

 ①動詞・形容詞の連用形について、質問を表す。

   例「あなたに見えて?」

    「胸がどきどきしなくって?」

 ②依頼をする。「てね」「てよ」「ないで」となることもある。この場合は女性限定の言葉ではなくなる。

   例「ちょっと待って」

    「本当にいらしてね」

 

◆女性語としての終助詞「てよ」

 「て」と「よ」が組み合わさったもの。

 連用形につく。助動詞「ない」には、終止形に「でよ」がつく。

 ①自己の意見の主張をする。

   例「あなたはその方が似合ってよ」

    「きっとあの人は賛成してくれてよ」

 ②依頼をする。この場合は女性限定の言葉ではなくなる。

   例「買ってきてよ」

 ③勧誘やねだりを表す。この場合は女性限定の言葉ではなくなる。

   例「何でもいいから来てよ」

 

◆女性語としての終助詞「こと」

 ①「ことよ」の形で断定を表す。

   例「邪魔をしてはいけないことよ」

 ②余情がこもった感動を表す。

   例「あら、綺麗に咲いたこと」

    「詩的だこと」

 ③同意を求める気持ちを込めて、相手の納得を柔らかく強制するニュアンスを持った質問をする。

   例「素敵じゃないこと?」

 

◆女性語としての終助詞「たら」

 「ったら」の形を取ることもある。

 注意を促し、じれったい気持ちで呼びかける。

 なお、『現代語の助詞・助動詞 -用法と実例-』には女性語であるとの記述がない。

 例「おじいさんたら、聞こえないの」

 

 主張の強さに視点を絞ると、主張の強さを抑えて女性らしさ(柔和さ)を表現するための終助詞は「わ」と「の」しかないことが分かる。「よ」「てよ」は女性専用の語であるというだけで、その表現するべき内容は控えめな主張ではなく、はっきりとした「断定」である。また、同意を求める「こと」も、ただの質問ではなく、暗に同意を強制するものである。

 これは女性語には主張を強める一面があることを示していると言えるだろう。

 断言はできないが、「わ」については、主張の強さを和らげる助詞として使われるうちに主張の強い言葉とともに使うイメージが定着し、その結果「わ」自体が強い主張を示す助詞であるかのような印象が根づいた可能性がある。実際に、用例として挙げられている「はっきりお断りするわ」は、文字通りはっきり意思を主張する発話である。これについては、「わ」が使われ始めた時代から現代までの意味合いの変遷を調査する必要がある。

 

6. 【先行研究の紹介】

◆1. 水本光美・福盛壽賀子・高田恭子(2008年)「ドラマに使われる女性文末詞 ―脚本家の意識調査より-」

     日本語ジェンダー学会 学会誌『日本語とジェンダー』8号より

 この研究では、80名のドラマ脚本家を対象に、女性語としての終助詞(この論文中では「女性文末詞」と表記されている)に対する意識調査を行った。

 小説家とドラマ脚本家では違いがあると思われるが、どちらも物語を作る仕事であるので、小説家の意識を考える上での参考になるだろう。可能ならば私自身が多数の小説家にアンケートを取るべきなのだが、現実的でないので、本レポートではドラマ脚本家の意識調査を参考にする。

 脚本家の多くはドラマを現実とは異なるものとし、リアリティより自分のイメージを優先して女性文末詞を利用していた。女性語を使う登場人物像はステレオタイプ化しており、知的な女性、中流以上の主婦、苦労知らずの娘、気取った女性、おかまに分類される。女性文末詞はデフォルメの道具となっており、上品さ、優しさ、年上らしさなどの他に、非現実的言葉使いであることから、演技、主張、嫌みを示すことも多い。

 女性語が持つ女性らしさ以外のイメージについて、この先行研究で明らかになったのは、現代における女性文末詞は死語になったことでその意味を失ったわけではなく、女性の言葉という要素に加えて、年を重ねた者が使う言葉、非日常的な言葉という要素を手に入れたということである。

 

◆2.山路奈保子(2006年)「小説における女性形終助詞「わ」の使用」

    日本語ジェンダー学会 学会誌『日本語とジェンダー』6号より

 この研究では、年齢や場面によって終助詞「わ」の使用・非使用が選択される小説において、年配の女性の台詞や、若い女性による強気な発言に「わ」が出現しやすいことが判明した。また、読者も「わ」を偉そうだと感じるという調査結果が出た。

  「わ」は本来女性的な柔らかさや親和性を表す助詞であったが、使用者の大半が年配の女性となった現在では年上らしさの象徴に変質した。偉そうな態度の時に「わ」を使うのは、年上らしさを取り込むことによって発話者が聞き手よりも上であるように見せるためである。

 女性語が持つ女性らしさ以外のイメージについて、この先行研究で明らかになったのは、女性形終助詞「わ」が近年「年上らしさ」を表現するために使用されているということである。

 また、「年上らしさ」から「偉さ」を演出することが可能であることも分かった。

 

7. 【まとめ】

 女性語が実生活で使われなくなってきているという事実が、フィクションの世界においての女性語に新たなイメージを持たせていることが明らかになった。

 女性語は女性らしさ(柔和さ)を表現する効果を失ったわけではないが、それ以外に、年上らしさ、偉そうな態度、非日常的な雰囲気、演技っぽさ、嫌味っぽさ、強い主張など、使用する場面によって異なるイメージを表現することができる。小説において、特に女性らしさを強調したいわけではない場面で女性語が使用された時、女性語はこれらの要素を台詞に付与している可能性が高い。

 女性語が非現実的な言葉使いだからこそ、小説ではそのことから得られるイメージでキャラクター性をデフォルメすることができる。仮に現実社会で女性語の使用が一般的になったら、小説内で女性語を使用しても特別な効果は得られない。その点で、デフォルメの道具としての女性語の在り方は、現実での女性語の衰退に依存していると言えるだろう。

 今後は、作者が女性語を採用した意図を推測しながら小説を読んでいきたいと思う。

 

8. 【注】

注1 松村明(2006年)『大辞泉』小学館 「女性的」の項

注2 小学館(1984~1989年)『日本大百科全書』 「女性語」の項(執筆者は真下三郎)

注3 松村明(2006年)『大辞泉』小学館 「女性語」の項

注4 小川早百合(2004年)『話し言葉の男女差 -定義・意識・実際-』

    日本語ジェンダー学会 学会誌「日本語とジェンダー」4号

    「1.男女差の定義」の章、「1.-2.-①」の項

注5 中村純子(2000年)『終助詞における男性語と女性語』

    信州大学機関リポジトリ「信州大学留学生センター紀要」Vol. 1

 

9. 【参考文献】

松村明(2006年)『大辞泉』小学館

 

小学館(1984~1989年)『日本大百科全書』小学館

 

国立国語研究所(1951年)『現代語の助詞・助動詞 -用法と実例-』秀英出版

 

中村純子(2000年)『終助詞における男性語と女性語』

   信州大学機関リポジトリ「信州大学留学生センター紀要」Vol. 1

   http://hdl.handle.net/10091/1830

 

小川早百合(2004年)「話し言葉の男女差 -定義・意識・実際-」

   日本語ジェンダー学会 学会誌『日本語とジェンダー』4号

   http://wwwsoc.nii.ac.jp/gender/journal/no4/B_ogawa.htm#10

 

山路奈保子(2006年)「小説における女性形終助詞「わ」の使用」

   日本語ジェンダー学会 学会誌『日本語とジェンダー』6号

   http://wwwsoc.nii.ac.jp/gender/journal/no6/03yamaji.html

 

水本光美・福盛壽賀子・高田恭子(2008年)

   「ドラマに使われる女性文末詞 ―脚本家の意識調査より-」

   日本語ジェンダー学会 学会誌『日本語とジェンダー』8号

   http://wwwsoc.nii.ac.jp/gender/journal/no8/02_mizumoto.html

 

※日本語ジェンダー学会のホームページで、過去に出版された学会誌を無料閲覧できる。

   http://wwwsoc.nii.ac.jp/gender/

 

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