『イルミナ』  中3の時書いたラノベ等身大すぎワロタww  →企画トップページ


第二章 正義という名の殺戮

 

 幾日か過ぎ、クラリスの腕の怪我が治ると、二人は宿を出た。

 クラリスは補充したい物が色々あったので、大都市であるシレジアに行こうと考えた。その為には、一つ山村を通らなければならない。とりあえずメイに了解を取っておくべきかとも思ったが、どうせ道も把握していないだろうし、黙って付いて来てもらうことにした。

 

 半日が経った。

「なんだか暗いですねー」

 それがメイの、村を見ての感想だった。

「確かに、活気がないな」

 クラリスも認める。それ程までに、その村は寂れていた。

 まず、声がしない。まるで、人のおしゃべりが風に吹き流されてしまったかの様だ。人はいるのに、存在感が無い。畑を耕す音、洗濯の音。それらが、余計に静けさを際立たせている。

 一方、人々の顔からは、疲れと緊張感が見てとれた。その目は二人のよそ者を前にしてもなお、作業する手を見つめ続ける。

「どうしたんですか? そんな顔して」

 メイは堪らなくなって、近くにいた村人に声をかけた。彼はようやく顔を上げると、慌てた様子で言った。

「山賊が来るんだよ! お前さんも、おとなしくしてな。あ! ほら、来た!」

 メイには山賊の意味が分からなかったが、向こうの山から歩いてくる男達がそれだという事は分かった。

 やがて、彼らが目の前を通り過ぎた時、メイは飛び出そうとした。だが、すでにクラリスによって腕を押さえられていた。その間に、男達は村の奥に行ってしまった。

 しばらくすると、彼らは大量の食料や金を荷車に積んで戻ってきた。クラリスはまだ、メイを放さない。

 遂に山賊は、山に帰っていった。メイはやっと放される。

「ほああ! 何するんですかー!」

 メイが叫んだ。

「押さえてなかったら、飛び出してっただろ?」

 クラリスは冷静だ。

「当たり前じゃないですか!」

 村の人達が可哀相だとか言うんだろうな、とクラリスは思った。しかし、そうではなかった。

「きっとあの人達、えらい人なんですよ。だから、もっと近くで見たかったんです!」

「違うだろ!」

 クラリスは思わず怒鳴る。メイは何を勘違いしているのだろう。恥ずかしさのあまり、顔から火が出そうだった。周囲の村人の視線が痛い。

「えっ……。でもみんな、貢ぎ物してましたよね……?」

「違う……。あいつらは悪人で、この村の人達から物を奪い取ったんだ。分かるか?」

 メイはかなりショックを受けた様だ。

「そうなんですかー!?」 

「……」

 周辺の村人が、舌打ちしながら散っていく。その中でただ一人、村長だけは残って耳を傾けていた。

「それじゃあ私、そんなことしちゃいけないよって教えに行ってきます」

 メイが言う。

「はあ? 何考えてんの?」

 もうやめてくれ、とクラリスは思った。とんでもない道連れを作ってしまった。一緒にいるだけで、こんなに恥をかくなんて。

 そんなクラリスをよそに、メイは説明を始める。どうやら、さっきのセリフをそのまま質問と取ったらしい。

「山賊さんは、それがいけないことだって知らないんですよ。いけないって分かったら、やめるに決まってます」

 そのとき、村長が咳払いをした。二人に気付いてもらう為だった。

「だが、奴らは人を殺したよ。いくら何でも、人殺しは悪いという事ぐらい知っているだろう。知らなかったとしても、それじゃあ済まされない」

 村長は言った。メイが眉をひそめたのを、クラリスは見逃さなかった。

「奴らに刃向かう者は、皆殺された。それに、食料不足で飢えに苦しみながら死んでいった子供も少なくない。わざと悪い事をする人間は、この世にうんざりする程いるんだよ」

「どうして……」

 メイの問いに、村長は悲しい微笑みを浮かべる。

「さあ、それが人間の本質だからかも知れないね。でも、安心しなさい。山賊どもは明日で終わりだ」

「どういう事ですか?」

 クラリスが口を開いた。村長は、彼女を大人だと思って、声の調子を改める。

「ルーヴァに撲滅を依頼したんです」

「ルーヴァって何ですか?」

 今度はメイが聞いた。

「知らんのかね? 世界の秩序を守る正義の組織だよ。隊員は皆、一流の魔導士だ。明日山賊を全員抹殺してくれる」

 村長は嬉しそうに答えた。彼にとって、憎い山賊の死は弔いであり、苦境からの解放を意味しているのだ。

「だめですよ、どんな人だって、殺しちゃったら……!」

 クラリスは驚いてメイを見つめる。メイの肩が、小刻みに震えていた。

「何言ってんの。人殺しなんだぞ……」

 クラリスが言い終わらない内に、メイは山に向かって駆け出した。

「私、絶対あの人達を説得します! もう誰にも死んでほしくないんです!」

 メイは振り返りもせずに叫んだ。

「やめろ! 殺されに行く様なものだ!」

 そういってメイを追おうとしたクラリスを、村長が止める。

「山の周囲には魔法の見えない壁があるんです。行けない事が分かれば、あの子も諦めるでしょう。ほら、そろそろ……」

 しかし、メイは走り続ける。

「おかしいですね……」

 クラリスに訝しげな目で見られ、彼は言葉を濁す。

 そして、とうとうメイは立ち止まる事も無く、山の奥へと消えてしまった。

 

 その後、クラリスは村長の家に招かれた。その時初めて、クラリスは彼が村長である事を知った。村長曰く、お詫びに部屋を貸してくれるのだそうだ。クラリスは何だか申し訳無かったが、その言葉に甘えさせてもらった。

クラリスは、部屋の床に座り込んで考えていた。メイのあの眼差しが、忘れられなかったのだ。

 人の命は重い。どんな事があっても。それは綺麗事かも知れないが、理想的な正論だ。だが、重いのと価値があるのとでは話が違う。クラリスとしては、悪人、それも人殺しだったら、世の中から消されても構わなかった。

 どうしてメイは罪人を庇うのか? 

『もう誰にも死んでほしくないんです』

 ふと、メイのセリフが思い出された。もしかしたら、彼女は山賊とイルミナ族を重ね合わせていたのかも知れない。過去の冷たい記憶が異常なまでの思いやりを作り出しているのなら、それはどうしようも無い事だ。

 あの時メイは、泣いていたのだろうか。

 クラリスは、考えるのをやめて顔を上げた。本棚にぎっしりと本が並んでいる。

 何げなく眺めていると、ある一冊に目が留まった。

『イルミナ族の真実 D・アンシェローク』

 それは、十五年前に探検家によって書かれた紀行文だった。

 クラリスは前書きを読む。

『イルミナ族と聞くと、野蛮で凶悪というイメージを抱く方が多いだろう。しかし、イルミナ族は、私が出会ってきた種族の中で最も優しい人々だ。

 私は偶然、旅の途中で彼らの村を見つけた。五百年間誰にも見つけられなかったその場所が、何故私に見つける事ができたのだろうか。本当に、偶然の巡り合わせだった。

 イルミナ族は、よそ者の私を丁重にもてなしてくれた。これから、その幸せな日々について記したいと思う。』

 それから適当にページをめくっていると、こんな文を見つけた。

『彼らはまるで、生まれた時に人間の悪い部分をそっくり置き忘れてきてしまったかのような、澄んだ心を持っている。

 彼らに悪という概念はない』

 それでクラリスは、メイが悪を理解できない理由が分かった様な気がした。

 メイは今まで、一度も悪に出会わずに生きてきたのだ。そういう育ち方をするとああなってしまうのかと思うと、恐ろしいものがある。でも、人間は誰でも必ず悪い心を持っているはずなのに、どうしてイルミナ族にはそれが無いのだろう。クラリスには不思議でならなかった。

 しばらくの間、クラリスは『イルミナ族の真実』を読んでいた。なかなか興味深い本で、切り上げる事ができない。中でも、十五歳の少年だと思っていた男が実は二十五歳で、彼には身籠った妻がいたというエピソードには失笑した。

その内に夜が来た。突然、外が騒がしくなる。

「村長! 山賊からこんなメッセージが!」

 クラリスが部屋を出てみると、村長が一枚の紙を手に持ち、そこに書いてある文章を棒読みしている所だった。

「何々……? 『娘さんのまっすぐな心意気に感服いたしました。つきましては、我々は改心しようと思います。』なんと!」

 そんな訳は無いと思いつつ、クラリスは村長に近付いていった。よく見たら、裏にも文字が書いてある。

「いえいえ、待って下さい。裏にもあります」

 クラリスは読み上げた。

「『んなわけねーだろばかやろー。あんなバカなガキ、初めて見たぜ。』」

 ひどい棒読みだ。

「『お前らのために、ルーヴァが来るとか、色々考えて話を作ったみたいだが、下手な冗談だ。村の者ではないが、これはお前らの責任と見なす。次の納品の時、布を三倍にしろ。』」

 あたりがしんと静まり返った。

「御迷惑をおかけして、申し訳ございません」

 クラリスがぽつりと呟く。

「いいんですよ、どうせ奴らは明日で終わるんですから」

 村長は苦笑しながら答えた。

「それより、あの子が心配です」

 確かに、利用する前に死なれては困る。

 そんなクラリスの表情を見て、村長は続けた。

「やっぱり心配なんですね。当然です。旅の仲間なんでしょう?」

「あ……ああ、まあ……」

 クラリスは曖昧な返事をした。まさか、本当の事は言えまい。彼女はとても複雑な気持ちになった。

 

 翌朝、ルーヴァが来村した。

 ルーヴァと言ってもたったの十五人、一隊だけだ。皆、鎧を身にまとっているが、百五十人の山賊を相手に敵うのだろうか。その時、クラリスは、ルーヴァの力をまだ知らなかった。

「お待ちしておりました」

 村長は恭しく出迎えた。しかし、隊長のガイル・トラバースは、にこりともしない。

「山賊のアジトがどこにあるのか、ご存じですか」

 無機質な声だった。

 村長は、挨拶さえも省く彼の態度に少々違和感を覚えながらも、質問に応じて説明を始めた。

 その間に、クラリスは隊員の一人に声をかける。

「あの」

「はい、何か?」

 振り返った隊員は意外にも若い女性で、しかも美人だった。

 彼女の名前はローゼ・アルボルといって、ルーヴァの新入隊員である。

「私の連れが山賊に捕われました。生存していたら、助けていただけますか」

 クラリスは言った。

「その方の特徴は?」

 言われてみると、あまりまともにメイを見た事が無い事に気付く。彼女は朧げな記憶の糸を手繰った。

「十二、三歳の女の子で、茶髪のセミロングです。それから、白い服を着てたと思います。あと……」

 出会ってから十日は経つが、ここまで仲間を気にかけていなかったとは、自分でも思っていなかった。ふいに、二度目に助けてやった時の事を思い出す。

「……あと、やけに色白なんです」

とクラリスは続けた。

「分かりました。力を尽くしましょう」

 その時、ガイルが集合をかけた。ローゼはクラリスに会釈すると、彼の方へ駆けていった。

 

「お頭ー、このガキ、どうするんですかい?」

 山賊の子分が尋ねる。

「そうだな、売るか。だが、馬鹿なのが玉に傷だな」

頭目は鼻先で笑った。

 ここは山賊のアジトだ。彼らは洞窟を住処としているが、今やそこは、人の手が加わって洞窟とは思えない程快適な場所になっていた。辺りには村の人々から奪ったものが置いてある。そして、メイも。

 メイは、正直に言うと――寝ていた。縄で縛られているのにも関わらず、すやすやと眠っている。昨日の夜、それまで泣いていた彼女は、泣き疲れたのか、いつの間にか寝てしまったのだ。

「じゃあ、こんなのはどうですか、お頭。俺達がこいつを教育して天才に育てあげる!」

 一人がおどけて言った。

「ははは、俺たちゃ山賊だぜ? 子育てなんかできるかよ」

 爆笑が洞窟に響く。

「面白そうだな。だが、これを天才にするには相当な年月が必要だ。情が移ったら売りづらいぞ」

 頭目は軽い調子で言ったが、実の所、さっさとメイを売ってしまいたかった。山の周囲に守りの魔法をかけたのは彼だ。ところが、メイはそれを破って追いかけてきた。つまり、メイの方が自分よりも強い魔力を持っているという事を彼は知っているのだ。頭目としては、メイの持つ力よって自分の地位が脅かされるのは、何としても避けたい。だが、そうはっきりと口にしたり、慌てた素振りを見せたりしたら、魔法のしくみがよく分かっていない子分達にまで自分が小娘に負けた事がばれてしまう。彼は、非常に難しい立場にあった。

 一方、子分達はどんどん盛り上がっていく。

「何年かしたら、このチビも大人になるだろ? そしたら、惚れるヤツが出たりしてな!」

「何だよー、お前、変態じゃねえの? 何歳離れてると思ってんだよ」

「分からないぜ、そういうお前が惚れるかも。けっこう顔はいいし」

「げぇーっ、お頭ー、何とか言って下さいよー!」

「静かにしろ!」

 最後のセリフは頭目のものである。彼は外に耳を傾けた。

「騒がしいな。少し見てくる」

 そう言うと、彼は外に出た。

「どうした、何かあったのか?」

 見回りをしていた山賊が、坂道を登ってくるのが見えた。遠くて聞こえないが、何かを必死で叫んでいる。

 次の瞬間、緑の閃光とともに血しぶきが上がり、その山賊は倒れて動かなくなった。

「まさか……!」

 蒼白な頭の顔に、恐怖の色が浮かぶ。冷や汗が背を伝い、逆に手は乾いていった。何とかしなくては、という思いだけが空回りする。

 ルーヴァは、すぐそこまで来ていた。

 

「大丈夫ですか?」

「……んー?」

 ローゼに揺り起こされてやっと目覚めたメイは、あっと息を呑んだ。

 洞窟の外では、ルーヴァと山賊が戦いを繰り広げている。メイが一番恐れていた事が、現実となっていたのだ。

「ルーヴァ……」

 メイは縄が解かれるなり戦場に飛び出していった。

 そこは、血と叫びに満ちた絶望の世界。ルーヴァは山賊達を事も無げに殺めていく。一人一人、確実に。

 傍で人が倒れる音が聞こえ、メイはぎくりとして振り返った。山賊の虚ろな瞳がこちらを見ている。わずかながら、その目に彼の思いが宿ったかの様に見えた。しかし、それも玉響の事。すぐに光を失い、彼の体はただそこに横たわるだけの抜け殻と化した。

 大きく見開かれたメイの目から、涙がこぼれ落ちる。人が死ぬ刹那に見る夢とは、何と儚く哀しいのだろうか。彼はもう、二度と時を刻む事ができないのだ。

 これが正義? 

 違う、こんなの正義じゃない! 

「やめて下さい! 何でこんなひどいことができるんですか!」

 メイは、近くにいたルーヴァの男に向かって叫んだ。それは偶然にも隊長のガイルだった。

 ガイルは眼下の少女を見据えて、冷たく言い放つ。

「彼らが悪だからだ」

 メイは涙を溜めて、目の前の男を睨んだ。

「悪い人だったら殺しても構わないって言うんですか!?」

 彼の目は氷の瞳だ。

「我々はむしろ、悪はこの世から排除されるべきだと思っている。悪人を葬る事が我々の使命だ」

「そんなのおかしい!」

 その瞬間、メイの頭上にガイルの手刀が振り下ろされていた。

 

「お連れはご無事でした」

 他の隊員よりも一足先に降りてきたローゼは、背負っていたメイをクラリスに渡した。クラリスの腕に、ずしりとメイの重みが伝わる。

「ちょっとあんた、いつまで寝てるつもり? ルーヴァの人にも迷惑かけて……」

 クラリスに呼びかけられても、メイは起きなかった。それもそのはずだ。彼女は眠っているのではなく、気を失っているのだから。

「あ、あの、疲れてらしたんでしょう。それに、ほら、筋トレにもなりましたし! 気にしないで下さい!」

 ローゼは慌ててごまかした。いくらルーヴァでも、邪魔だからと言って人を気絶させるのはいかがなものかと、彼女自身が思ったからである。

「ただ、一つ伝えておきたい事が……」

 ローゼは深長な面持ちで言った。

「この子には、あの山で起きた事が辛すぎるかも知れません。できれば、今までの事は全て夢だったというふりをなさる事をお薦めします」

 クラリスが頷く。

「一度部屋に戻ります。あなたはまだ、この村にいらっしゃいますよね」

「ええ」

 クラリスがメイを抱えて部屋に戻っていくのを見送った後も、ローゼは村長の家を見つめ続けた。あの少女は、何も知らないのだ。世の中に蔓延る悪の深刻さを。ルーヴァの仕事は素晴らしいのに、彼女の目には残酷な殺戮ぐらいにしか映らなかったに違いない。そう考えると、何だか悲しくなった。

 部屋の中では、クラリスがメイの寝顔を観察していた。見れば見るほど、こんな顔だったっけ、と思えてくる。クラリスはやっと、自分は無感情になりすぎたと反省した。思えばこの十日間、ろくに口も利かず、メイに寂しい思いをさせていたかも知れない。別に、メイが可哀想だからというのではないが、嫌われてしまったら仲間にした意味が無くなる。それに、メイはまだ弱い。自分が保護者として面倒を見、守ってやらねばならない存在なのだ。もう一度、メイとの付き合い方を考え直そう。クラリスはそう思った。

 

 メイは目を開けた。なぜか建物の中にいる。上半身を起こして周りを見渡すと、そこにはクラリスがいた。

「おはよう。って言っても、もう昼だけど」

 クラリスは苦笑いした。

「山賊さん、みんな殺されちゃったんですか……?」

 メイの頬を、ぽろぽろと涙が伝う。だが、表情は変わらず、クラリスを見つめたままだった。自然に流れ落ちる涙。優しすぎるメイだからこそ流せる涙。クラリスは、心の中で、この不思議な光景に見入ってしまった。でも、体はそういうわけにはいかない。

「はあ? 何を寝ぼけているんだ。それ、夢の話だろ?」

 彼女はできるだけ軽く言った。

「……夢?」

 メイは、ぽかんと口を開けてクラリスを見つめる。

「覚えてないのか? あんた、この村に来てすぐ、眠いって言って寝たんだよ」

 クラリスは、用意しておいたセリフを言えば良かった。

「……そうでしたっけ?」

 メイがきょとんとする。

「そうだった」

 途端に彼女は、激しく泣きじゃくった。メイが笑うだろうと思っていたクラリスは、びっくりして駆け寄る。

「どうしたんだ……?」

「良かった……。誰も死んでなくて……。本当に、良かったです!」

 メイは顔を上げて微笑んだ。その時クラリスは、久しぶりに彼女の笑顔を見た様な気がした。

 

 メイとクラリスは、その日のうちに村を出る事にした。

「村長さん、どうもお世話になりました」

 クラリスは村長の方に歩み出る。

「いえいえ、大したおもてなしもできなくて、すみませんね」

 村長は、クラリスに手を差し延べた。そんな仲だったか疑問に思ったが、礼儀上彼女も手を出して握手する。すると、村長がクラリスの耳元で囁いた。

「私は、あの子の優しさに元気付けられました。人間は決して悪いだけの存在ではないと、確信できたのです。だから、私たちは自信を持って村の復興を目指します。あなた方も、どうかお元気で」

 そして二人は、村の人々に見送られながら、村を出た。

 しばらくして、メイがぽつりと言った。

「クラリスさん。もし、バイゼンが説得されても反省せずに悪いことを続けたら……。私はどうしたらいいと思いますか?」

 クラリスは少し考えてから答える。

「……そういう事は、自分で考えるものだ」

 メイは悪を理解し始めている、とクラリスは直感した。メイは悪の存在を知り、それが身近に溢れているものだという事にも、理屈だけでは消し去る事ができないものだという事にも気付いたのだ。これは、イルミナ族であるメイにとっては、大きな一歩に違いない。昨夜山賊に何を言われたのかはわからないが、メイが常識的になる事を期待するクラリスだった。

 

 

 

 

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