2013年9月15日
知り合いの方へのメールより抜粋。
※トシコというのは成井豊氏の演劇脚本『ケンジ先生』の登場人物で、過労の人気歌手。仕事で自由を奪われるあまり自分を見失っている。
私は先ほど、「好きな歌を、好きな歌い方で、好きな時に歌いたいというだけなら、プロになってはならない」と言いました。また、それはトシコも承知の上だっただろうとも。
では、トシコは何故歌手になることを選んだのでしょうか。
自分の作品をより多くの人に見てほしいと思う時、その根底には大きく分けて2つの動機があると思います。
一つは、評価されたいという気持ちです。
トシコにも、人気者になって自己顕示欲を満たしたいという気持ちが少しはあったかも知れません。しかしトシコはおとなしそうなので、主たる動機ではないでしょう。
もう一つ――これこそが芸術家の情熱に火をつけるものだと思いますが、それは、「自分に見えているこの美しい世界を、他の人にも見せてあげたい」という気持ちです。
トシコにも、歌手になった当初は夢があったはずです。自分のイマジネーションの世界にある美しいものを、他の人々にも見せてあげたい、聴かせてあげたいという夢が。